スウェーディッシュ・コネクション
1942年7月25日。
この手の作品は大概が重々しいのですが、本作はモダンでスタイリッシュ。というのも、全編が安全な庁舎でのお役所仕事だから。しかし、ホロコーストを何とかせねば。その焦燥感が常にある。本作は第二次世界大戦中にユダヤ人10万人あまりを救ったスウェーデン人イェスタ・エングゼルの伝記です。実に、爽快。
作風はタランティーノ風。悲壮感なく、ただただ一刻を争う使命感に突き動かされていく。高官のサイン一つでユダヤ人の命運が決まる「官僚戦争」とは言ったもの。エングゼルたちは大胆に法の抜け穴を手繰るのだが、ナチス幹部に筒抜け。ヘビに睨まれたカエルの踏ん張りが本作の見どころ。
本作が『シンドラーのリスト(1993)』や『杉原千畝(2015)』と違った物語になるのも、この頃のスウェーデンの特異性にある。
欧州でナチスの侵略を免れた国は二つ。一つは中立国スイス。スイスは中立国の立場から交戦国を含む外国と銀行取引できるためにそのまま置かれた(実は、ドイツの略奪品の資金洗浄に使われていた)。もう一つは本作の舞台スウェーデン。スウェーデンは地理的に侵攻不要だったのもあるが、王室が英独両陣営と懇意だったり、資源や銃器を進んで供給したり、上手く立ち回った。それでも、ユダヤ人狩りは免れなかったが。
思うに、ヒトラーは勤勉な労働者だった。国王や皇帝を敬う権威主義者。ドイツ国民のためでなく、ドイツ国家のための総統。厳しい父の影響も見え隠れするが。ヒトラーがルネサンス期の美術品に陶酔していたのも、王権神授説の絶対王政時代への懐古(ピカソやゲルニカなどのモダンアートを嫌悪していた)。絶対王政や帝政はファシズムの前身。ヒトラーは時代を中世期に戻そうと考えていたのかも知れませんね。古代ローマ時代かな。なので、王室に少なからず敬意があったのかも。
⋯と脱線しましたが、こういった官僚主義に情で訴えても意味がない。お役所仕事なのだから(それでホロコーストを正当化するのだからたまったものではないが)。〝法には法を〟というのがエングゼルの賢いところ。賄賂や非合法な方法は逆手に取られていただろう。でも、
エングゼル氏は1997年に旅立たれました。100歳とのこと。ご冥福をお祈りします。
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