感想文:4.3/5.0

次期ローマ教皇選出のドタバタ劇。

ちょっと強引でしたけど、教皇選挙に一石を投じる作品でした。この結末も、あらゆる教皇問題が解決するだろうけど、あらゆる宗教問題が噴出するでしょうね。

2000年の歴史

ローマ教皇は1世紀に始まり、現代の226世まで続いている。中には、前教皇を殺害したゼルギウス3世、時のローマ皇帝に退位を命じたグレゴリウス7世、といった越権行為も。王や皇帝と異なる絶対性と伝統がある。

主人公ローレンス枢機卿は「教皇に選ばれるつもりがない」と言い放つ。それでも候補の擁立に奔走する姿は、作中で指摘されたように「野心」の建前と本音が見え隠する矛盾を感じました。コンクラーベとは、枢機卿が自身の罪と欲望に向き合う期間なのかも知れませんね。

でも、次期教皇の名。13世紀、ローマ教皇が最も権力を有した十字軍時代の教皇名です。何が始まるのやら。

改革派。

作中、コンクラーベは何の変哲もなく見えて、実は根深い教皇問題を多く描いていました。女性問題や得票売買はもちろん、特筆すべきは宗教戦争です。宗教戦争は8世紀のレコンキスタで知られるように、主にキリスト教とイスラム教の紛争です。奇しくも、聖地が同じエルサレムであるがため、キリスト教徒24億人とイスラム教徒18億人の紛争は現在でも解決の糸口がない。

でも、この結末なら…?

保守派教皇が両宗教の分断を続ける昨今、本作の結末は両宗教の融和を示しました。さらに、しれっと宗教以外の問題の融和も。コンクラーベの伝統に則っりながらも、伝統を覆す作品だったように思います。

開放感と解放感。

主演レイフ・ファインズは大役でした。首席枢機卿の義務感、協会の行く末を決める緊張感、選挙の公正を願う正義感、この結末から起こりうる未来への焦燥感、多くの感情が混じり、教皇選挙の重圧が伝わりました。そして、コンクラーベが終わった後、解放感あるシーンは歴史や立場が連想できる者ならば言い表せないでしょう。

物語:0.5/映像:0.3/主演:0.5/リピ:0.4
結末:0.4/音楽:0.3/助演:0.4/満足:0.5